『 桜 』
東日本大震災と原発事故発生以降、原発や放射能、被ばく問題に関する勉強会や講演会が福島県内では各地で盛んに行われています。
自分たちで復興に向けて地道な努力を重ねていますし、それが被災者の運命かもしれません。
そんな中で、夫と妻の隔たりが大きくなる家庭もあり、「原発別居」「原発離婚」などという言葉も聞こえています。
子どもを持つ家庭が、避難や疎開、家族別居などの選択に迫られています。
子どもは放射線量の少ない所へ避難させたいが、父親は仕事で地元に残らざるを得ないケースも多くあります。
引っ越しや転校で友達と別れたり、両親の離婚など、子どもたちは思いがけない状況に巻き込まれています。
さらに酷いことに、福島から引っ越した子どもが、転校先の学校で「放射能がうつる」と根拠のないイジメにあったという報道も聞きました。
いま福島の子どもたちが危ない。
それは、マスコミが騒ぐ放射線量だけじゃなく、精神的ストレスが心配です。
以前から絵本の出版など作家活動をしていた私が感じた使命感。
それは書いて伝えることでした。
東北大震災直後にお世話になっているポプラ社で林真理子さんらとともに、励ましのメッセージを出させていただきました。
ポプラ社の復興支援ホームページに、ペンネーム「ペガサス」として掲載されている詩を紹介させてください。
震災直後の私の気持ちがわかって頂けると思います。
『 桜 』
海沿いの小さな分校で、子供たちは春を待っていた。
もうすぐやって来る巣立ちの時。
本当にもうすぐだったのに、悲しみは突然やってきた。
先生に急き立てられ、無我夢中で高台に走った。
学舎は、海の波にさらわれていった。
この町は、都会に電気を送るために大きな発電所を作った。
自然ではないエネルギーを使う発電所。
神様の罰だって言った人がいる。
じゃあ神様、この町の人達はどんな罪を犯したというのですか?
過疎の町は、発電所を作って潤ったけれど、生きていくために選んだ道。
自分たちで使う電気じゃない。
実際にそれを使ってきた都会の人間は、安全な場所で今も・・・
この町の子供たちが、どんな罪を犯したというのですか?
この町に生まれたのは、不幸な運命なのですか?
海沿いの小さな分校の小さな校庭には、古い大きな桜の樹が残った。
古い大きな桜の樹は、今年もまたいつものように桜の花を咲かせるだろう。
それを見て、みんなは放射能浴びてる花だって、目を背けるかな?
そんな馬鹿な。
桜の花にだって罪は無い。
先生が、桜が咲いたらあの樹の下で卒業式をしようって言った。
東北の春はまだ遠い。
でも、長い冬にも終わりが来る。
春は、必ずやって来る。
みんなが元気な笑顔で、桜の花を見られますように・・・
この詩は、絵本・児童書を出版しているポプラ社のホームページに今も掲載されています。
http://www.poplar.co.jp/special/egao/message.html
(つづく)